上場を控えた日本郵政。物流大手トール買収の目的とは?
2015/04/17
この秋に、今年最大のIPO案件となる日本郵政グループ3社が上場します。
そのグループの本体である日本郵政が先日、超大型M&Aを発表しました。オーストラリアの物流最大手であるトール・ホールディングスを買収する方向で進めているということですが、この買収には、一体どんな思惑があるのでしょうか。
トール・ホールディングスとは?
まずは、買収先であるトール・ホールディングスがどんな会社なのかからお話ししましょう。
トール・ホールディングスは、オーストラリア最大の物流グループで、アジア・オーストラリアでの物流に強みを持っています。
積極的なM&Aによる事業拡大を行っている企業で、身近なところでは、2009年に日本の物流会社フットワークエクスプレスを買収しています。数年前頃から、ブランドイメージ転換のためか、オレンジの字で「Footwork」と書かれていた車を見なくなり、緑の字で「TOLL」と書かれたトラックを見かけることようになってきました。
日本郵政が上場前に買収する目的は?
日本郵政グループの上場は、アベノミクスの第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」にあたる規制緩和のよるものです。
第1・第2の矢が放たれ一定の成果を上げていますが、第3の矢が成功しないことには、アベノミクスは無駄な国債増発をしただけに終わってしまいます。だから、日本郵政グループの上場とその後の業績推移は、政府としても失敗できない一大イベントなのです。
(※上場後の株価を上げるという意味ではありません)
現在、世界のリスクマネーを日本に呼び込むための施策の成果もあり、日本株への評価が徐々に高まってきています。とはいえ、世界の投資家が認める企業のトレンドは「高ROE」です。
東証全体(TOPIX)でのROEは約8%。アメリカでは、S&P500での平均ROEは20%を上回っています。
JPX日経400というROE重視の指数ができ、その構成銘柄を目指してROE向上に力を入れる企業が目立ちます。しかし、2014年3月期の決算公告によれば、日本郵政のROEは2%を切っています。
「上場で手にした資金を元に事業拡大を…」という考えでは遅すぎるという考えもあったのでしょう。今の余裕資金でM&Aや自社株買いなど、ROE向上への姿勢を見せることで、内外の機関投資家へのアピールをしたかったのでしょう。
トール買収に死角は?
トール・ホールディングスを買収することに死角はないのでしょうか。
2つ、気になる問題がありました。
ひとつは、トール・ホールディングスの買収総額です。
先月の新聞報道では6000億円規模と言われています。報道内容にサヤ寄せするように、トール・ホールディングスの株価が反応。6豪ドルから9豪ドルまで急騰し、現時点での時価総額が6000億円近くになりました。
ただ、「何が何でも買う」という日本郵政の考えを逆手に取り、買収額の引き上げを要求するステークホルダーが出てくる可能性も否定できません。
もうひとつは、買収後に営業利益率アップでROEを向上させることができるかです。
M&Aと自社株買いでROEを上げるのには限界があります。ROE向上の足を引っ張る郵便事業や国債運用に頼るゆうちょ銀行の業績向上が不可欠です。
日本郵政の売上は、ほとんどが日本向けです。一方のトールグループの売上構成は、7割がオーストラリア・ニュージーランド、2割がアジアとなっています。国内大手の合併のように、「同一市場でのシェアアップで業務効率化」という作戦は通用しません。
よって、日本国内での業績向上、アジアでのシェアアップなど、いくつもの課題を並行して解決していかなければなりません。
また、今回のM&Aで、国内物流の統廃合が進めば、それも日本郵政にとっては逆風にもなりかねません。
従来型の経営手法ではなく、高ROEを目指す上場企業に必要な経営戦術を打ち出すことができる経営者が必要となってくるでしょう。
今回のトール買収は、日本郵政にとってかなり高いハードルなのではないでしょうか。
しかし、その程度はできないと、失われた20年を吹き飛ばすような日本再生は果たせないという日本郵政や政府の気持ちの表れなのかもしれません。
けれども、本当にそう考えるのであれば、年賀状の需要縮小を素直に受け止め、発行枚数を大幅に減らし、郵便局員の自爆営業をやめさせるところからなんじゃないかと…。
本当に強い会社は、生活・仕事の両面で従業員を幸せにすることができているはずですからね。
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